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「これは・・・」
墓荒らし達は思わず息を飲んだ。棺の中にはまるでたった今眠りについたかの様な美しい男が横たわっていたのだから。
闇夜を照らす月のような色をした美しい金髪、
瞬く星々を表したかのような長い睫毛・・・閉じられた瞳はどんな色をしているのだろうか
これは夢なのかもしれない。二人はそう思った。
百年以上も前に死んだ人物が醜い骸の姿ではなく、生前の姿を現在まで留めていられるはずがないと。
確かに男は生きているように見えた。
しかしその肌の色は紙のように白く、唇も赤みを帯びていない。まさに人形のようだと形容するに相応しい存在だった。
もしかすると、本当に精巧に作られた人形ではないかのかと墓荒らし達は思う。
すると突然死体・・・いや、棺の中の男がゆるりと起き上がった。まるで息を吹き返したかのように。
「ひ!!?」
突然の事におもわず飛び上がって後ずさる墓荒らし達。そのまま逃げ去ればよいものを、驚きのあまりその場から動けずにいる。
「『また』起こされた。はて、どのくらい私は眠っていたのだろうか。」
棺の男は呆気にとられている墓荒らしに気づき、深いため息をつく・・・
「今度はお前達の仕業か。全く、埋め直してくれとは頼めないだろうし・・・」
何やらぶつぶつと棺の男が呟いているのをよそに、まだ墓荒らし達は固まっている。
無理もないだろう。とうの昔に死んだはずの人間が目の前で生き返ったのだから。
墓荒らし達は顔を見合わせる
「な、なあ、本当にこいつが伯爵か?俺たち夢でも見てるんじゃないか」
「どうやら現実らしいぜ・・・にわかにゃ信じたくねえがな」
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