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新聞配達が終わリ、朝食の用意をしていた母に頼まれ、すぐ角の『奈良岡商店』に卵三個と焼き海苔を一枚買いに行った。
「おばちゃん、おはよう!」
「おはよう正治。今新聞配達が終わったのかい?」下駄を履いて土間をカラカラ歩いてきた。
「うん。あのねぇ、卵を三個と…」障子が開けっ放しの居間に、ちゃぶ台に向かって座る小さな背中が目に入った。
僕は上がり縁に両手をついて「英継君!」と声を掛ける。
英継君は赤いセーターの背中をギュッと回して、手に持ったお椀を口につけたまま「ふぐふぐふぐ」と何か言ってきた。
‐きっと〈正治、おはよう〉と言っているんだ‐とろろ昆布が口からお椀にダラァ~ンと繋がっていた。
「ね、ね、英継くん、今日も奈良岡のおばちゃんのとこでご飯?いいなぁ」僕は上がり縁から膝歩きしながら首を長ぁく伸ばし、おかずを覗く。
キャハッと英継君は笑いなが手招きする
「正治、早く」
「何?何?」
僕はズックを履いたまま、ズリズリとちゃぶ台前ま進む。
英継君は、「正治、あ~んは」指で摘んだ食いかけのさつま揚げをぶらぶらさせている。
僕は、目の前のさつま揚げをパクッと口に押し込んだ。
「正治、卵三個と何だっけ?」
おばちゃんが聞いてきた、
僕はさつま揚げで口の中がいっぱい、
「うぐうぐうぐ」と唸るだけで返事にならない。
「何だって?」
おばちゃんに背中を叩かれ「・・・焼き海苔一枚」やっと言葉が出た。
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