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「正治、幼稚園終わったら遊ぼう」
英継君の言葉は僕の自尊心をくすぐる。
だって、幼稚園の皆が羨ましがるんだもん。
〈正治って、英継君の親友なんだよね〉
〈正治って、毎日英継君と遊んでいるんだよね〉
〈夜、銭湯も一緒なんだよね〉
などと、皆がいいなぁ~、いいなぁ~って悔しそうだ。
僕と英継君の通っている幼稚園は違う、っていうか、この辺りの子供達は皆『みどり幼稚園』というマンモス園に通っている。
唯一、英継君だけが『M幼稚園』に通っていた。みどり幼稚園は歩いて10分しかかからない。
英継君のM幼稚園は、繁華街の中ある教会がやってる幼稚園だ。
かなり時間がかかる場所にある。
ここから歩いて30分くらいかかる電車の駅へ行って、それから20分揺られて二駅先の『中央駅』まで…。
駅から降りると橋を渡り、坂道を登って行くと、坂の上に大きな樅の木と教会の鐘が見える。
その隣に英継君の幼稚園はあった。
お使いの品物を持って家に帰る。
「ただいまぁ、奈良岡のおばちゃんのところに英継君がいたよ」
ガスコンロの前に立つ母に品物を渡す、母は僕の顔を見て頭を撫で「本当に板垣君も可哀想よね。いつも一人でご飯食べていて…」
「えっ、一人じゃないよ。奈良岡のおばちゃんも一緒だよ!」
「そうだね。奈良岡のおばちゃんも一緒だもんね」
母の顔が少し曇った。
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