‐正治君の回想・1‐

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‐えっ、なに?‐ 熱くなったフライパンに母が割って落とした卵が、ジュッと音をたてた。 「かわいそう?」 僕は母を見上げて訊いた、父が胡坐をかいて、ちゃぶ台で新聞を読みながらボソッと言う。 「まぁ、他の家のことに口を挟めないからなぁ」 目玉焼きの匂いが家の中に広がる。 母が焼き海苔にハサミを入れながら「でもねぇ、板垣君は正治と同じ歳なのよ。毎日毎日他人任せで、可愛い顔していつも笑っているだけに、よけい不幸で見ていられないわよ」 「うん、まぁなぁ・・・」 父が頷いて「ウチでは何もしてあげられないしなぁ…」呟く。 「それに、あの暴力でしょ!」母の言葉を「子供たちのまえで、そんな話はよしなさい!」父が強く叱咤する。 母は黙ったまま、皆の皿に目玉焼きを載せていった。 「ねぇ、英継君はどうしてかわいそうなの?どこが不幸なの?」 僕は兄に問う。 「僕にはそんな難しいこと分かんないよ」兄はうるさそうに味噌汁を掬ってお椀に入れている。 僕はぐいっと父を見る、 「・・・正治と板垣君は親友だからなぁ。こんな話しをしたら、正治も心配になるだろう」 「うん、僕・・・英継君がすぉごく心配だよ」 「そうだよな…」父は、胡座をかいた膝においた両手に力を入れ、少し悲しい顔をしいた。
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