22人が本棚に入れています
本棚に追加
‐えっ、なに?‐
熱くなったフライパンに母が割って落とした卵が、ジュッと音をたてた。
「かわいそう?」
僕は母を見上げて訊いた、父が胡坐をかいて、ちゃぶ台で新聞を読みながらボソッと言う。
「まぁ、他の家のことに口を挟めないからなぁ」
目玉焼きの匂いが家の中に広がる。
母が焼き海苔にハサミを入れながら「でもねぇ、板垣君は正治と同じ歳なのよ。毎日毎日他人任せで、可愛い顔していつも笑っているだけに、よけい不幸で見ていられないわよ」
「うん、まぁなぁ・・・」
父が頷いて「ウチでは何もしてあげられないしなぁ…」呟く。
「それに、あの暴力でしょ!」母の言葉を「子供たちのまえで、そんな話はよしなさい!」父が強く叱咤する。
母は黙ったまま、皆の皿に目玉焼きを載せていった。
「ねぇ、英継君はどうしてかわいそうなの?どこが不幸なの?」
僕は兄に問う。
「僕にはそんな難しいこと分かんないよ」兄はうるさそうに味噌汁を掬ってお椀に入れている。
僕はぐいっと父を見る、
「・・・正治と板垣君は親友だからなぁ。こんな話しをしたら、正治も心配になるだろう」
「うん、僕・・・英継君がすぉごく心配だよ」
「そうだよな…」父は、胡座をかいた膝においた両手に力を入れ、少し悲しい顔をしいた。
最初のコメントを投稿しよう!