‐正治君の回想・1‐

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‐英継君ってかわいそうなの?- -不幸なの?いつも明るくって、勇敢で、僕達の頼りになって、何でも知っていて、瓶や銅線の屑を売って小遣いにすることだって教えてくれたのに…。 -それなのに、英継君はいつも一人で淋しさを我慢していたの? -僕達の知らない所で不幸に泣いていたの? -僕達に優しい英継君は、本当は自分自身を僕達に優しくしてもらいたかったの? -僕の友達なのに・・・僕は、僕は英継君に何もしてあげられない…。 -ごめんね英継君…- 僕の目前が霞んでくる、小さな胸が詰まって苦しくなってきた、我慢しても我慢しても涙が溢れだす。 「ねぇ母ちゃん。英継君がいるから僕やつかさ君達だって、好子ちゃんや近所の女の子達だって広場で遊べるんだよ!『三角ベース』も『陣取り』、『縄跳び』や『ゴム飛び』だって、いじめっ子にびくびくしないで安心して出来るのは全部、英継君のおかげなんだよ!それなのに、それなのに…」 僕は悔しくって、なんだか無力な自分が恥ずかしくって、どぉぅっと打ち寄せてくる悲しさに胸が潰れそうで、僕は泣きながら母のお尻を何度も叩いていた。 「正治…」母がしゃがみこんで僕を強く抱き締めた。 硝子の板戸を小さくコンコンと叩く音がして、 「正治く~ん」擦れた声がした。 「あっ、英継君だ!」僕は慌ててラン二ングの裾を手繰り上げ、涙を拭き、鼻水をズルルッと拭った。
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