‐英継の黙された過去‐

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先生の怒った顔とは対照的な、シスターの優しさに満ちた慈悲深い眼差しに男の子は預けられた。 悪さをした園児は、礼拝堂でお祈りを強いられ、神の許しを乞う。 こうして、男の子が許しを乞うのは何度目だろう。 男の子は美しい顔に似合わず、問題児だった。癇癪もちで、自分の思い通りにならないものを嫌い、破壊していった。 静かな読み物の時間、〈他の子供の読んでいる絵本を寄越せ〉と殴り、 お絵かきの時間、〈金色、銀色のクレヨンを寄越せ〉と怒鳴り、 工作の時間、〈上手く作れない〉と他の粘土細工を潰し、 お外の時間、〈砂遊びや、花摘みをする女の子達〉の砂の城を壊し、摘んだ花を踏み躙り、 男の子は触れるものを全て破壊していた。 又、反対に静かなときも多かった。園児達の誰とも口をきかない男の子は、皆から離れた場所で一人、小さな擦れた声で歌を口ずさんでいた。〈…このまま死んでしまいたい〉と。 男の子の悪さがひどいと、園児達の父兄からの苦情も多く、先生は何度か男の子の両親に連絡をして出向いてもらった。 その都度、男の子の父親が深く頭を下げて、男の子を連れて帰ったが、一度として母親が姿を見せたことはなかった。
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