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「ウチのクラスや友達によく噂を聞くんだ」
「なんだって?」
僕は兄の顔を覗き込む、
「・・・自転車盗まれて売られたとかぁ、石で頭を殴られたとかさぁ」
兄の自転車を漕ぐスピードが少し落ちた。
確かに、兄の言うことは少しだけ当たっている。
でも英継君は、町内の誰のものも盗まないし、誰のことも殴らない。
英継君がやっつけるのは、友達や仲間をいじめる悪い奴らだ。
年下の僕達をいじめる嫌ぁ~なヤツだ。
自転車を盗まれたヤツなんか、きっとそうに決まっている。
僕はいかに英継君が正義の味方かっていうことを兄に力説する、
「さとる君だって、つかさ君だって、・・・僕だって英継君にいっぱい助けてもらっているんだから!」
「助けてもらうって?」
後ろをふり向いた兄の鼻が赤い。
「うん、国立病院の空き地があるでしょ?
あそこって、兄ちゃんと同じ三大小学校の悪いヤツのたまり場だったんだ」「へぇーっ」
「でね。あそこで遊んでいると、そいつらにお金を取られたり、いじめられたりされるんだ」
「ウチの学校にも悪いヤツがいるんだな」兄が呟く。
「兄ちゃんが知らないだけでいっぱいいるよ。それでね、英継君が悪いヤツをやっつけてくれたから、皆安心して遊んでいるんだよ」
「へぇ、知らなかったなぁ」兄が肩を震わせてスピードを上げた。
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