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親父が真剣な顔をして私を呼び出したのは、桜の花が咲くか咲かないか……とにかく、まだ春には少し遠いころのことだった。
「……」
「……」
広い部屋に親子が二人……。ただただ沈黙が流れる。
思えば、こうやって親子で向き合うなんて何年振りだろうか?小さいころは、母親が居なかったせいか周りが心配するぐらいにベッタリしていたのに……。気がつけば、お互いに顔を背けていたような気がする。
そんなことを考えていると、親父が一通の書状を差し出した。
「私に?」
「いや…違う。今、全国の名のある武将に送られているようだ」
「…親父って、名のある武将だったっけ?」
「……」
私のツッコミに親父が黙った。何か裏があるようだ。
私は、書状に目を通した。至急、京都に参集すべし。書状には、それだけが書かれていた。
「どういうこと?京都で何があるの?」
「最期の印、見てみろ。それは帝のものだ。…どうやら帝は、何かを企んでいるに違いない」
「……畏れ多くも帝のことに対して企んでるに違いないって…」
「偉い奴の考える事は、八割強は良くない企みなんだよ」
親父は、大欠伸して言った。
いや、アンタの方が八割強良くない企みばかりの人間だろ……という言葉は飲み込んだ。
私は、書状を親父に返した。
「…で?まさか京都に行け~…なんて言わないよな?」
「おぉ!さすが我が娘!そのまさかだ」
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