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「ふざけてんのか!!!」
私は、思わず親父に掴み掛かりそうになった。
確かに私は、そこらの姫より力はある。男所帯で育ったせいか、野性的に育ったと思っている。しかし……私も一応は年頃の娘だし、いきなり何が待っているかわからないところに一人旅しろと言われても戸惑う。
親父は、そんな私に焦る様子も驚く様子もなく襖の方に声をかけた。
「藤丸」
「はっ!ここに!」
親父に呼ばれて勢いよく襖が開いた。そこには、小柄なくノ一が立っていた。
「久遠、お前にくノ一をやる。だから、行って来い」
「そんないきなり……」
「俺は、畑が忙しいんだ。もうすぐ種蒔きだ田植えだって忙しくなるし、時丸はいないと俺が飢え死にするからな」
そんな自分勝手なことあるかと抗議しようとした瞬間、くノ一が目の前に割り込んできた。
その隙に親父は逃げてしまった。
「久遠様ですよね!?私、藤丸と申します!」
「あ、えっと……」
「さぁ、早く用意しましょう!」
「だから私は京都には行かな……」
いと言おうとすると、くノ一もとい藤丸の目が潤んだ。
「私では京都に行けないのですか?……わかりました。国に帰って一家心中しま」
「待って待って!!!行こう!京都に行こう!!」
「ホントですか!?では、早速準備を…!」
「……何だか、親父に上手くやられた気がする」
こうして私は、京都に行くことになってしまった。
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