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京都まで、もうすぐという道を二人で歩いていると、何故か右上半身を露出した人が自分たちより少し前を歩いていた。
ここまで何事もなく来れたが、ここに来て露出狂と遭うなんて災難だと私は眉を顰めた。とりあえず、隣を歩く藤丸に耳打ちした。
「…露出狂だ。周り道しよう。藤丸」
「あれは、尾張の織田信長ですよ。ほら、着物に家紋が……」
「いや、家紋入りの着物なんてちょっと頑張れば誰だって作れるよ」
「そんなこと言ってたら、叩き切られますよ」
焦る俺を藤丸が冷静に止めた。
尾張の織田信長…。相当なうつけだと聞いたことがあるが、ここまでとは…。
私は、再度藤丸に耳打ちした。
「ホントにあんな露出狂が織田信長?顔が良いから道行く人は誰も突っ込まないけど、あんな露出狂が武将で一国治めてるとかヤバいよ」
「言い過ぎですよ。久遠様」
コソコソと藤丸と話をしていると、露出狂…織田信長が振り向いた。メチャクチャこちらを見ているのを感じる。
とりあえず、余所見をして目を合わせないようにして、このピンチをどう乗りきるか、必死に考える。
すると、何故か信長がこちらに向かってきた。
「おい」
「ひぃっ!」
「久遠様、みっともないので悲鳴とかあげないでください」
声を掛けられた瞬間、私は本能的危機を感じて方向を変えて逃げようとした。
しかし、方向を変える隙もなく藤丸に捕まった。畜生…逃げられない。
「余が、尾張の織田信長だ」
「…知ってます」
「そうか。おぬしも帝からの書状で京都へ向かっておるのか?」
「いや…」
「そうです!」
否定しようとした瞬間、藤丸が答える。一気に血の気が退いた。
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