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そんなあいつの実力を認めるのに時間はかからなかった。
ある朝のことだ、私はいつもより一人分多い朝食を作っている最中にそれは起きた。
(ん?沼のそばに人の気配……はぁ、また賞金稼ぎか……)
その気配にあいつも気がついたらしかった。
「呪術師さん、表に50人くらいの賞金稼ぎやらがいますが安心していつものように紅茶でも淹れてて下さいね」
根拠のない自信だとは思えなかった。確固たる実力の上に成り立つ余裕のように私は思えた。
事実、その通りだった。あいつは縦横無尽に鉈の様な大剣を振り回し、塔のような大盾で賞金稼ぎを捻り潰す。
他にも何でも入る不思議な袋から器用に武器を変えて応戦していた。
「あいつ……なんて強さなんだろう……」
私は初めて見る無類の力に高揚すら覚えた。
自然に口角が上がり、ただ呆然と笑う私を見上げてあいつはこういった。
「どうでしょうか?」
沼は数多の死体を飲み込む、今回もその数が50ばかりと増えただけだ。
「おまえ、やるじゃないか。ふふん、それでこそ雇ったかいがあったものさ。さぁ、食事にしよう豚の塩漬けも食べ頃だろう」
その日の朝はいつもより奮発した。
「呪術師さん、お願いがあるのですが」
あの朝からいく日か経過した昼時のことだった。
相変わらず私の元に死ににくるバカ共の数は減らず、むしろ増えて行っているような気もする。
そんな中であいつは私に頼み事をした。
「僕にも呪術ってつかえるんですか?使えるなら教えてください」
「急にどうした。お前は確か魔法が使えていただろう?」
「それでも申し訳ないほどですよ。魔法の槍や矢を撃つ事や魔法で武器を強める何てことは初歩らしいですし。なにより貴方の放つ呪術に惚れました」
なんと言うか、恥ずかしいことを惜しげも無く言うやつである。
「ぅん……いや、使えないとこは無いんだ………ただ……」
「ただ?」
「お前は呪術を使えばより一層後戻りできなくなるんだぞ?」
「何を今更、あなたを守る自体後戻りなんてできませんし、そんなぬるい事は望んでないですよ」
あいつはそう笑っていた。
私は何だか複雑な気持ちだったが、反面少しだけ嬉しくもあった。
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