大沼のはなし

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 その瞬間、わが家を囲む騎士団に大きな火柱と爆発、熱風が襲った。 『燎原の大火』と我々は呼ぶその焔の本流は、騎士団をいとも簡単に飲み込み、骨も残らず焼き尽くした。彼らの足元を見ると、このあたりでよく採れる黒くねばねばした液体が撒かれてあった。この液体は、異様なまでによく燃える。この大火と相まって、騎士団には地獄を見せた事だろう。今でも思い返すと気の毒だと思うほどだ。 「ふぅ・・よく燃えたなぁーやっぱりこういう派手なのを使うと気持ちがいいもんだ」  馬鹿弟子は、相変わらず飄々と笑っている。 「この馬鹿弟子!なぜ私の教えてない術まで使った!!」 「え、師匠が一回見せたから、できるかなと・・・」 「そういった軽率な事は金輪際やめろ!貴様、後悔してからは遅いのだからな!!」 「は、はい、すみませんでした・・・」  馬鹿弟子は、まるで飼い主に叱られた子犬のようにしょんぼりと地面を見つめていた。流石にここまでへこんでしまうとは私も思わず、何故か私までも心が絞められている様であった。だからか、大甘なことに何故かこの馬鹿弟子を褒めてしまった。 「ま、まぁ、初めてで荒いとはいえ、ここまで出来るとは思わなかったぞ馬鹿弟子」 「へ?」 「両手を離して褒めてるわけじゃないからな、自惚れるなよ、それにまだ生き残ってる騎士が居るだろう、さっさと片付けてこないか」 「は、はい!待っててくださいよ、師匠!」  すると馬鹿弟子は元気を取り戻したように残存の騎士たちを嬉々として狩っていった。中には大層な手練れの騎士もいただろうが、どれもこれも赤子同前、いや、藁のように大きな鉈の様な剣でなぎ倒されていた。  一通り、いや、一匹残らず片付けた後のことだった。馬鹿弟子はガシャガシャと甲冑を鳴らしながら焦げ臭い大沼を此方へと歩いてきた。 「師匠、一応全員やりましたけど・・・これからどうします?」 「ふぅ・・そうだな、うん、このままとどまっていても次の軍団を相手する羽目になりそうだ」 「いっそ、旅に出てしまうとかはどうですか?」  馬鹿弟子が冗談交じりに言った。馬鹿弟子は冗談のつもりで言っていたのだろうが、私には大層現実的で魅力的な提案のように聞こえた。
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