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バッシャーンッ!!
私が椅子から立ち上がるとどこからか水音が響いた。
目をやるとそこには大きな鎧を着た大きな人間が倒れていた。
「ふん、なんだ、行き倒れか」
あんなもの、いつものことである。
差し金、騎士団や神官にそそのかされた冒険者か、武者修行のアホかだからな。
「だが、そんなアホでも持つものは持ってるからな。私の糧にさせてもらうよっと」
私は浮遊の呪術を使い沼に足をつけずに人間に寄って行った。
追い剥ぎやらと呼ばれるような行為だが、罪悪感は無い。
これも生きるためだ。
「うぅ……ぐぅ……」
「ん?こいつ生きてるのか?」
よく見るとこいつは男だった。それにまだ若い、顔は兜で覆われて見えはしないが声を聞けばわかる。
そいつは羽虫のように弱々しく唸り、最後の力で私を見上げた。
そして
「美……人…だ……ぁ……うぐぅ………」
そういって再度力尽きた。
「へ?」
その後からはよく覚えてはいない。
生まれて初めて男の人から美人だと言われ、恥ずかしくも頭が真っ白になった。
それで気がつけば私の家の一室であいつは寝ていた。
もとい、私が介抱したのだが。
実に安っぽい理由で助けたなと自分でも反省はしている。
こいつは実は騎士団の一員で私を殺しに来てたとかただでさえ呪術師は外敵が沢山なのに、私は何をしているのだろう。
だが、直感だが、こいつだけは今までのやつとは違うんじゃないかと感じた。
人肌恋しさからのやましい想いなのかと私も一晩唸った。
こんなに悩んだのは呪術を探求するとき以来だ。
結局答えは出ないままこいつを介抱し続けた。
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