うたかた

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「じゃ、今夜はお願いします」 「ああ」 あいつが婚約していた事は知っていたんだ。 でも、もしかしたら・・・・なんて俺らしくもなく君に賭けてみようと思った。 偶然?必然? 今日の仕事はその婚約パーティーに呼ばれていた。 あいつの親は金持ちだからついでにダンスパーティーでもやるのだろう。 そして呼ばれたのが俺。 今夜は正装をして歌うよ。 嘘つきな君の為にね。 婚約者と二人で現れた君はとても綺麗だった。 昨夜の君とは大違いだね。 君は乱れた髪の方が似合う。 そんな髪型もかしこまった正装も似合わない事に気付いてる? 最初は簡単に終わる恋だった。 恋と呼べるかどうかはわからないけど、俺は君が好きだったんだ。 でも、もう何もかも遅いのかな? 君の心はどこにあるの? 歌を歌いながら見つめる視線は君の美しい横顔。 視線を合わせない君だけを見つめて俺の気持ちを歌にして伝えた。 本当は愛してる。 愛してない。 君が欲しい。 思わせぶりな態度は俺の心を闇へと突き落とす。 痛いのと苦しいのは全然違う痛みだと言う事を教えてあげる。 美しい君から視線が離せない。 君の婚約者が俺をじっと見つめていた。 どうやら俺の視線に気付いたらしい。 でも、君はわざと視線をそらすんだね。 そうやって自分を偽ればいいさ。 だから嘘をつくなら最後までつき通してよね。 この偽りの世界でずっと俺から視線を逸らせられる自信があるのなら・・・・・・・・
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