迦陵頻伽 ―Kalavinka―

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『確かに受け取りました……私が貴方の道に立ち塞がる事は無い……貴方が生きている間は』 「役名「裏切り」の言う事だ、怪しいモンだね……頼むよイスカリオテのシモンの子ユダ君……それじゃ……娘が待ってるんでね」 夜の帳が降りようとする海沿いの街ラフレシアの片隅 封印された地区、裏街にある夕闇の応接室の中で仄かに明るい、ややメタボリックな中世フランス貴族を模したホログラフと、隻眼の男が佇んでいた 時は18:20、街がいつもどこかで起きる「特別な夜」を迎えようという時間 『撒いた種から実を収穫するには早いのでは?……焦りは……』 「収穫じゃない……清算、ツケは僕の代で払い終えたい……飛ぶ鳥後を濁さず、死ねない君には理解し難いか……」 テーブルに重ねて置かれた、ソフィアから強奪したシールの束 ホログラフがテーブルを見下ろすとドアが静かに閉じ 夕闇の応接室には誰も居なくなった 魔人の幻影を除いて 『私共と神のチェス、そこに貴方の椅子を設けたかった……偉大なるカモメ……なぜこうも偉大な者が短命なのか……短いから命は輝くなどとは言うまいな……』 触れないシールに手の幻影を重ね、魔人は呟くとスポットライトは彼を許すかの様に消えた
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