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桜蘭通りからゼノ・エルド通りへ抜ければ、永久に動かないつもりなのか雀達が街に来てから変わらない路駐車達が出迎え
切れた街灯が桜蘭通りより物悲しく死んだ車達に影を落とす
「姉ちゃんトイレ我慢できなかったらメリル・ホッパーズ行く?近いし買い物しなくてもトイレ貸してくれっから」
「えー?貸さないよアソコのホッパーズ!!断られたモン私!!」
「んな事……ん?」
妙な、聞き慣れない音に雀の目つきが鋭くなると会話を止め、女は初めて何かあったのかと疑問に思う
女が口を開こうとした瞬間、雀は女の口を塞ぎ車の影に引き込み歩道にしゃがみ込んだ
誰かさんがその場面を観ていたならプリプリご立腹だろう
後ろから雀が女に抱きつき口を塞ぎ、女は年下の幼さを残す、かなりの行動力の男の子に尋常じゃなく早い胸の鼓動が伝わらない事を祈る
お姉さんでいたいのだろう
「……なんだありゃ……船、か?」
「……え?ど、どこ?」
「上……飛んでる……」
とりあえず口から離れた手を微かに力を入れ握り、空を見上げながら
少し自分の声が上擦っていた事に焦り、バレていない事にホッと息を吐く
「確か三法輪のだよ、詳しくはわからないけど……どうしたんだろ?ムルギベルに行くのかな?」
「ちょっと!!当たり前みたいに言う?見た今の?海の上を走る船よ今の!!別にロケットとかっぽくねぇし火も出て無い!!見間違いかもだけど……オール?船漕ぐ奴いっぱい出てて……動いてたよね?」
雀が見たのは明らかに海上を走る船の船底、そして船を縁取る様に空気を攪拌している飛び出た無数のオール
大きさは雀達が居る通りの長さに比べてみれば恐らく200メートル程度だろう
海上を走る船としては大きいがが空飛ぶ戦艦にしては小振り
その船は実に静かに飛ぶ、恐らく本当にオールが推進装置なのだろう
ふよっふよっふよっふよっふよっふよっふよっふよっふよっふよっ
と微かな音を残し移動して、ムルギベル広場の真上に停まったのが見えた
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