高校3年の夏

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今日はもう祥子さんの所に行くのはやめた。 こんな状態の槙野さんを連れて行ったら、勘のいい祥子さんのことだ、すぐに何かあったと気づくはずだ。 俺だけでも行こうかと思ったが、俺も平常通りに振る舞う自信がなかった。 だから学校を出て、そのまま槙野さんをアパートまで送っていった。 アパートの前に着くと、槙野さんが「じゃあ」と言ってアパートの中へ入っていった。 俺も帰ろうとしたが、カレーのタッパーのことを思い出した。 「やべ、返すの忘れてた。」 …カン、カン、カン アパートの階段を上り、槙野さんちのドアの前までくる。 …毎日そこまでは来るけど、アパートに入ったのは初だな…。 そんなことを思いながら、インターホンを鳴らした。 …ガチャ 「あ、昨日のタッパー…」 俺はタッパーの入った袋をバッグの中から取り出し彼女へ渡そうとした。 …槙野さんの目からは、また涙がこぼれていた。 きっと一人になって、また怖くなって泣いてたんだ…。
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