高校3年の夏

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たぶん今頃、山瀬が槙野さんに告白している頃だろう。俺の勘が当たっていれば。 『気にならない』といえば嘘になる。 でも槙野さんが到底OKするとも思えなかった。 「山瀬か…」 ほとんど印象がない奴だ…。 覚えていることと言えば…、最初に槙野さんと朝軽く挨拶したときに睨まれたくらいか…。 それくらいで嫉妬するとは、心の狭い奴だなと思った。 急に体育のバスケのとき、俺が吹き飛ばされたときのことを思い出した。 『ごめん!大丈夫か?』 ぶつかってきた奴が申し訳なさそうに手を差し出す。 『…あぁ、大丈夫。気にすんな。』 怪我を隠してそいつの手をとり立たせてもらう。 『…くそ、山瀬の奴がいきなり押してきやがるから。』 そいつがボソッと呟いた声を俺はそのとき聞き流していた。
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