74人が本棚に入れています
本棚に追加
「…大丈夫?」
俺は明らかに大丈夫じゃないと分かっているのに、そんなことしか聞けなかった。
「少し話そうか?」
俺がそう提案すると、彼女は目元を擦りながら頷いた。
「お邪魔しまーす。」
俺は玄関で靴を脱ごうとして気づいた…俺、ずぶ濡れだった。
なかなか部屋へ上がらない俺を不思議に思ったのか槙野さんが
「どうしたの?」と心配そうに聞いてくる。
「いやー…、部屋中をびちょびちょにする自信がある。」
俺がそう言うと、槙野さんは「あ、そっか!」と言って「こっちに来て。」と俺を案内する。
なるべく床を濡らさないようにつま先立ちで上がると、槙野さんについて行く。
案内されたのは風呂場だった。
「…え?」
俺が止まると、「何?シャワー使っていいよ。風邪ひくから。」と槙野さん。
「いやー…、着替えないし…」
「今日の体育のときの体育着は?」
確かにある。確かにあるが…、問題はそこじゃない。
そこじゃないんだよ槙野さん…。
最初のコメントを投稿しよう!