高校3年の夏

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「…大丈夫?」 俺は明らかに大丈夫じゃないと分かっているのに、そんなことしか聞けなかった。 「少し話そうか?」 俺がそう提案すると、彼女は目元を擦りながら頷いた。 「お邪魔しまーす。」 俺は玄関で靴を脱ごうとして気づいた…俺、ずぶ濡れだった。 なかなか部屋へ上がらない俺を不思議に思ったのか槙野さんが 「どうしたの?」と心配そうに聞いてくる。 「いやー…、部屋中をびちょびちょにする自信がある。」 俺がそう言うと、槙野さんは「あ、そっか!」と言って「こっちに来て。」と俺を案内する。 なるべく床を濡らさないようにつま先立ちで上がると、槙野さんについて行く。 案内されたのは風呂場だった。 「…え?」 俺が止まると、「何?シャワー使っていいよ。風邪ひくから。」と槙野さん。 「いやー…、着替えないし…」 「今日の体育のときの体育着は?」 確かにある。確かにあるが…、問題はそこじゃない。 そこじゃないんだよ槙野さん…。
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