高校3年の夏

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「亮!暑いんだけど!」 祥子さんが俺に夏の暑さを何とかしろと言ってくる。 「お母さん、クーラーは体が冷えるからダメだって言ってるでしょ!」 槙野さんが軽く祥子さんを叱る。 いつもの光景…。 病室の窓を全開にして廊下のドアも開けて風の通り道を作っている。 たまに窓の上に下がっている風鈴が風を受けてチリンチリンと小さく音を奏でる。 「あんた達、もうすぐ夏休みじゃないの?」 祥子さんが尋ねる。 「あぁ、あさってから。」 「ふーん。」 「…何?」 「別にぃ…。」 祥子さんは下唇を突き出してわざとらしく返事する。 …全然、可愛くないんですが。 「ちゃんと夏休みも来てやるから。」 俺がそう言うと祥子さんは 「うわぁぁ、夏芽ぇ!ここにナルシストがおるでぇ~」 と俺を変態を見るような目で見てくる。 窓際で勉強している槙野さんがおかしそうに笑っている。
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