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「私は《川田(かわだ)》という者です。私はミステリー作家の《安 剛(やす つよし)》先生の担当編集をしていました。」
「やすつよし?」
レイはいかにも知らそうな反応をする。
「ドラマの原作とかになるくらい有名な人ですよ。この前も《エレベーターの暗号》とかやってましたし。あと、この人の作品はいつも何かしら暗号があって名前も暗号をもじっているみたいです」
「やすつよし、あんごう、ね。続けてください」
レイは私の補足説明に興味がないようだった。
「それで先生が少し前に亡くなったのですが。先生の書斎にある金庫の暗証番号がわからないんです。先生の書斎には私と……もう1人以外は先生の御家族でも頑なに入れようとしなかったので、御家族の方から書斎にある金庫を任されまして。そんな話を上司にしたらここを紹介されました」
川田さんの言葉の最後の方にとてつもない違和感を感じた。
なんでこの事務所が紹介されるのかが疑問だからだ。
「つまり、金庫にはあんごう先生の遺作があるかもしれないから是非とも開けたいと」
「そうなりますかね」
川田さんは少し俯いて答えた。
「分かりました。では貴方が依頼人という事でよろしいですか?」
「はい。お金の方は当社から支払いますのでご安心ください」
「では、お引き受けしましょう」
「よろしくお願いします」
川田さんは立ち上がってこちらに会釈した。
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