1章 はじめのいっぽ

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急に彼女の顔が浮かび上がる。 コガネは指先から青白い火を次々と出して二人を囲む。 辺りは気づかないうちに薄暗くなっていた。 遠くの空では橙と闇色が入り混じる。 青白い火の玉がゆらゆらとコガネの表情を変えていく。 階段脇の杉林に暗闇がわだかまり、潜んだものを隠す。 「タネも仕掛けもございませんってね。 火の玉についた釣り糸も、 釣り竿持った人もおらんよ」 また読まれた! 確かに目を凝らしても釣り糸は見あたらなかった。 でも 「タネが無いなんて嘘だ!」 「そう思うなら調べたらええじゃん。 火傷せんように気ぃつけてね」
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