1章 はじめのいっぽ

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怒鳴り声で反射的に顔を上げるとそこには女がいた。 「どぅおうわっ」 「さっきからウチが話しかけよるのになんでシカトしょん」 女の顔は、目の前20cmにあった。 女は下の段から覗きこむように見ていた。 「ヒィッ!」 顔がひきつる。 こんな間近で女の顔見ることなんて電車くらいしかない。 (それも気付かれないよう横目で) 「ヒィッてあんた…… こんなカワイイ子が上目づかいで見てきて悲鳴あげるとかないじゃろ!」 「じ、自慢じゃないが ここ最近女との会話は怒鳴られるか、泣かれるか、怯えられるか、の三択なんだ」 言いつつ目を逸らす。 頑張って出した声も震えている。 あとは察してもらいたい。
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