第1区

11/40
前へ
/123ページ
次へ
ああ、やっぱり俺はバカだったんだ。こんなに俺の事思ってくれている彼女がいるのに、自分が恥ずかしくなった。何を怖がっていたんだろう。 「ありがとう。」 一言お礼を言って浴槽を出た。体を洗っていたら由美が背中を流してくれると言うので、お言葉に甘えた。 ごしごしと彼女は背中を一生懸命流してくれた。 頭を洗おうとシャワーを浴びた時、由美がなにか言っている。なに?と聞き返した。 「………も……あ…め……ない。」 今度は、シャワーを止めて振り向いて聞き返した。 「でも、………あきらめられない。」 さっきまでの穏やかな由美はいなかった。そこには暗い表情の由美がいた。 浴槽から出て俺の後ろに来るやいな、無理やりキスをされ何かを飲まされた。いつの間にそんなものを口に含んでいたのだろう。 「なにを、飲ませた……?」 息が上がる。 「すぐに楽になるよ。私がちょっと手を加えたの。光輝が呑み込んですぐ溶けるようにしたから。効いてきたでしょう?」 朦朧とする意識の中、彼女が薄く笑みを浮かべていたのが分かった。
/123ページ

最初のコメントを投稿しよう!

433人が本棚に入れています
本棚に追加