怨霊

3/10
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/10ページ
 彼が亡くなった翌日、私はいつも通りに高校へ登校した。一週間前までは彼が居ないかと挙動不審になっていたが、その心配がないため清々しい気持ちで歩道を歩いていた。  すると不意に背中に視線を感じた。前にも感じたことのある冷たい視線。私は心の中で自分に言い聞かせた、「有り得ない!」って。覚悟を決めて振り返ると、私の直ぐ後ろに高校の制服を着た居るはずのない彼が卑しい笑みを浮かべて私を見ていた。  私はその姿を見て思わず声を上げそうになったが、それを押し殺し彼に背を向けて走り出した。自分の錯覚であって欲しいと思いながら体力が続く限り逃げるように走り、暫く走った後に振り返ると彼の姿は無く辺りは何事もなかったように静かだった。  私は胸に嫌な思いを抱きながら学校に向かって歩き始めたが、やはり彼の視線を感じる。それを無視して学校の校門を潜り抜け、教室へ向かっていった。  それから授業中も昼休みも何時でも彼の視線を感じ、更に私の視界に彼が映るのである。そんな日が何日も続き、彼の声まで聞こえるようになってしまったが、幽霊のストーカーなんて警察が信じるわけがない。そう思い彼氏に打ち明けたが真面目に聞いてもらえなかった。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!