怨霊

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 「……幽霊にストーカーされてるのか」 男の人の血のような左目を夢中になる程に見つめていたが、突然男の人から聞こえた言葉に驚いて私は尋ねた。 「な、なんでわかるんですか!?」 「あんた、名前は?」 私の問い掛けに対して答えるつもりがないのか、問い掛けを無視して男の人は左目と黒い右目で冷めた視線を向けながら名前を尋ねてきた。 「……高橋 明日香です」 男の人は私の名前を聞くと首を小さく二三回縦に振ってから、ゆっくり口を開いた。 「オレは九條 天心だ。好きに呼べ」  天心さんの名前を聞いて私は漸く彼の姿を見るだけの余裕を持つことができた。彼は耳に掛かるぐらいの長さの黒い髪で、鋭い目で相変わらず私を見つめている。 「あの、天心さん……私を助けてください!」 「助けるのは簡単だが、対価がいるぞ」 「た、対価?」 もちろん支払いや報酬が必要だって思っていたけれど、対価という言葉に驚いてしまった。 「あぁ、もし金持ちから依頼されれば大金を要求する。だが貧乏から依頼されれば何も要求はしない。依頼者本人に見合う報酬を要求するんだ」 私は学生だから高額な要求はされないかも。でもきっとお金は要求される。 「い、いくらですか……?」 「お前の場合は金じゃないな。その鞄の中にある手鏡が対価だ」
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