怨霊

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「……九十九神というのは様々な道具、例えば江戸時代に使われていた傘とかな。それらが長い間、大切に扱われ傷つかなければ神様になることだな」 天心さんが極力簡潔に教えてくれていることはわかったけれど、一つも理解できなかった。そんな私の様子に気づいてくれたのか、天心さんは再び口を開いた。 「取り敢えず長い間使われた道具などは神様になるんだよ。オレはその神から力を借りている」 「じゃあ、天心さんも九十九神を持っているんですか?」 正直、普段の私ならば笑い飛ばしてしまうような会話を平然と交わしている。でも、それを不思議に感じる自分は居らず、寧ろ興味すら持っている。  私からの問い掛けを聞いた天心さんは、部屋の隅にあった棚に近づいて戸を開けて、中から一本の木刀を取り出した。 「木刀……ですか?」 それを見た私は、素直に尋ねてみたけど天心さんは一言も口にすることなく両手で木刀を握り締めた。するとゆっくり両手を左右に引っ張り、木刀は二つに分かれ隙間から銀色に光る金属が見えた。 「ほ、本物!?」 私は思わず叫んでしまってから、左手で口を押さえて声を殺した。それでも彼は無言で、刀を鞘に戻してしっかりと左手で握り締めた。 「模擬刀とかではないからな」  静かにそう呟くと刀を机にゆっくり置いてから、振り返り私と向き合うと紅い左目を向けて彼は切り出した。 「本題に戻るぞ。何でそいつはお前をストーカーするようになった?」 彼の左手の人差し指は、しっかり私の右肩を示していた。
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