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「い、いいの?」
「見るだけだよ」
慌てて見守りながらも強くは止めない百香の前で嬉々丸が箱を開けると、中にはケーキが入っていた。
だがブッシュドノエルではなく、純白のショートケーキだ。つやつやのイチゴもちゃんと乗っている。
「うわ~…。…ねぇ、私の無くなっちゃったし食べちゃあ……」
「いや、…見るだけだよ」
さっきの言葉をそのまま繰り返して、呆れながら箱を閉めた。が、百香は箱を閉めて冷蔵庫を閉めるまで、ずっとキラキラした目で見つめていた。
「見るだけだよ?」
「わ、分かってるよ!!何も言ってないでしょ!!」
「……」
嬉々丸の疑わしげな視線から逃げるように、百香は冷蔵庫から離れた。
くるん、と楽しげに一回転してから、嬉々丸に振り返った。
「次はどうするの?」
「え"?……これじゃあ証拠も少なすぎて“誰かが食べた”としか分からないよ。もう諦めたら?」
「やだー!!私のケーキだもん!!見つけたらるいちゃんにも一口上げるからー。みつけてよー」
嬉々丸は『まだ駄目か』と内心ふくれながら、一口どころか全部食べたケーキを思い出す。
そういえば嬉々丸が食べる時、あの紙は貼っていなかった。
だが、疑問を覚えてもちゃんと調べる気なんて無い嬉々丸は、事件の迷宮入りを百香に伝えようとして……、
「…………?」
視線を感じて振り返ったが、そこには誰も居なかった。
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