1.その男、盗人

3/25
前へ
/203ページ
次へ
先ほどから、耳から漏れる声に苛立ちを感じながら「チップ。少し黙っててくれ」と男が 小さくいう。 彼らが、狙っているのは、赤い瞳のような丸い形をかたどった、ルビーのブレスレットだった。 『わかった。わかったよ。あ!でもちょっと待て!その先にある、扉には要注意だ』 男は立ち止まり、耳に手を当てた。 「なんだ」 『この扉は、二重扉だから、簡単には開かないぞ』 「で?」 『で?じゃなくて、俺の出番だろ!!俺の!!』 男は、嫌そうに耳からイヤホンを外した。 苛立つ気持ちを落ち着かせながら、外したイヤホンを手に「わかったから、早く解除しろ。現場にいるのは俺たちだ。つかまったら、お前を殺すぞ」といった。
/203ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加