1.その男、盗人

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イヤホンからの声は聞こえなくなった。 ほっとした男は、再び耳にそれをつけながら、見上げた。 『まったく、チップのやつには、ほとほと参るわね』 スレンダーな女。 黒い、タイトな服が体のラインを強調する。 「リザ」 『あら、“ルパン”久しぶりね』 イヤホンから声が聞こえ、男は思わず耳に手を当てる。 「その名前で呼ぶな」 『いいじゃない。わたしは、こっちの名前の方が好きよ』 男は、視線を戻し「チップ早くしろ。リザが来てる」といらだった声でいった。 『今日は、ウォルトはいないの?』 リザの質問に、答える様子のない”ルパン”と呼ばれた男。
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