4.その男、移動

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―――――。 カタカタとキーボードをたたく音が部屋に響いている。 「なぁ、チップ。さっきから何をしてるんだ?」 ウォルトが、ソファーから顔を出しながらチップのほうを見た。 カタカタと鳴り止まないキーボードの音。 眉間にしわを寄せたウォルトは「俺の話を聞いているか?」と再度催促をした。 「あぁ。聞いてるよ。何をしてるか、だろ?知りたい?」 キーボードをたたく音はやまないが、顔はウォルトのほうを見ている。 チップの発言に嫌な予感がしたウォルトは黙って首を振った。 「何をしてるか、気になるんだろ?」 キーボードをたたく音がさらに大きくなった。 「わかった!わかったよ。聞くから、音を控えてくれ」 そういわれ、一瞬キーボードから手が離した。
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