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もともと五月祭というのは、春の訪れを祝うのと夏の実りを祈念する古い風習から来ているとか。
なれば、人の間でも喜びあうのは至極当然のこと。それが人生の春を謳歌する若者なら尚更だろう。
「だから、5月になったばかりの日に愛を確かめあうの。それで、すずらんを恋人に贈るのよ。」
「なんで、すずらんなんだ?他の花でもいいじゃないか。」
古今東西、女の子はロマンチックな謂われに憧れる生き物。
「ばかね!ちょうどこの時季に咲くからいいんじゃない。」
「確かに庶民には手に届きやすい花だしな。」
デリカシーがない!と膨れる恋人を右手で引き寄せ、そして背に回した左手にはすずらんの花束。
すずらんの精たちは夜明けとともに、開きかけたつぼみに愛を深める香りをせっせと施していく。
5月1日。
フランスでは、街角で、森の中で、こんな風景が毎年の恒例行事。
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