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三角に尖った耳は音を立体に捉えることができ、また、狙った方向の音だけを拾うのに適している。
今その優れた聴力で分かるのは、自分と同じ姿をした四頭の仲間がこちらに向かっていることだけだった。
獣人は犬のように飛び出た鼻をひくつかせ、先ほど少女が倒れこんだ場所へ近づく。
そして、正に少女が倒れたのと寸分違わない場所へ鼻を近づけた。
彼らの最大の武器は、夜も昼のように見える視覚でも、どんな遠くの物音さえ聞くことができる聴覚でもなく、その人間の数十倍優れている嗅覚なのだ。
その嗅覚が今、確かについ先ほどまで、自分達が追っている獲物がここに居たことを告げていた。
人間の、しかもまだ若い少女特有の濃い匂いがそこには満ちていた。
ここに倒れたときの温もりさえも、匂いが伝えてくれる。
少女は知らなかったが、逃げる際とっさに羽織ったあの白いマントには、外敵に自分の気配を悟られないための簡単な魔法が掛けられていた。
そのため、彼等獣人族の追っ手を巻きながら、ここまで逃げ延びることができたのだった。
だが、マント以外が触れた場所、素手で触った場所には僅かな匂いが残ってしまう。
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