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人の形をしていない『人間ならぬ者』には、人肉を喰らいその血を啜る種族も数多く存在する。
この地では決して、人間が自然界の頂点に立つ生物ではないのだ。
だが人間は、ただその存在に恐怖するだけの弱い生き物ではなかった。
肉を引き裂く爪もなく、骨を噛み砕く牙も持たない人間の最大の武器である『知恵』
それを使い、自らの命を脅かす者を逆に狩る人間も現れるようになったのだ。
彼等はハンターと呼ばれ、多様な武器や道具を用いて『人間ならぬ者』を狩る。
ここ、カーネヤの南東に位置するイナザーの村にもまた、そんなハンターを生業とした一人の少年が居た。
「なんだろ…」
少年は深い森の奥を見つめ、いつもと違う様子に不安を隠せないでいた。
──森が静かすぎる。
それが何か良からぬ事が起こる前触れのような気がして、まだ幼さも残る少年の鼓動を早くしていた。
昼までは確かに、いつもと変わらぬ普通の森だった。
小鳥達がさえずり、小動物が動き回る姿も時折見かけることができていた。
木々の間を抜けるそよ風も、とても気持ちいいものだった。
だが今は、森の生き物は静まりかえり、風さえも吹いていない。
上空では、あんなに雲が早く流されているのにも関わらず。
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