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厚手のマントを羽織ってるとはいえ、転んだり小枝や野バラの棘に引っ掛ければケガもする。
実際、ここに来るまでの間にも何度か転んだのであろう。
足元は泥だらけで、一見して高価な物だとわかるヤクの毛で作られた白いマントは所々、ほころびができていた。
マントから覗かせる手にも、泥に混じり血がにじんでいる。
だがその人物は、そんな痛みなど少しも感じてはいない。
痛みなど感じている余裕がない。といった方が正しいかもしれない。
時折後ろを振り返るその目には、恐怖の感情しか映し出してはいなかった。
そう、まるで何物かに追われているかのように。
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