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手の感覚がなくなるほど強く握りしめていたにも関わらず、未だ氷のように冷たいその石を、少女は吸い込まれるかのように見つめた。
少女はこのネックレスを見るのはもちろん、その存在や自分の父親が所有していたことすら、つい先日まで知らなかった。
魔法や魔力を秘めた道具の知識も、本や教師から教わった程度の知識しかない。
しかし、この石がとてつもなく凄い力を秘めていることくらいは、すぐに想像できていた。
魔法に関しては素人の自分ですら強く感じることのできる不思議な何かを、この石は放っているのだ。
なにより、このネックレスのせいで父親が命を落すことになったのだ。
何か重大な秘密が隠されているに違いない。
だが、あの優しかった父親の命と比べたなら、こんな物などなんの価値もない。
全てを投げ出し、素直にただ悲しみの感情に流され、大声で泣き叫んでしまえたらどんなに楽だったろう。
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