光と闇

2/6
前へ
/49ページ
次へ
マコトは家にいた。 自分の部屋で、ベットに横になると、あの時の事を思い出していた。 『キミはもう、黒死蝶に狙われた。』 あの言葉はなんだったんだ。 『黒死蝶に?何のこと?ボクにはさっぱり…。』 『ワカラないならいいよ。今は…でも黒死蝶は、キミのスグそばまで来てる…きっと、キミを狙いに。その本みたいに。』 本の中では、読んでいる自分は本に出てくる誰にでもなれた。 子どもの頃は、ピーターパンを読めばピーターパンにも、フック船長にもなれるし、今なら推理小説の中の探偵にも犯人にでもなれた。 夢の世界でなら、誰にでもなれる。 そんな、いろんな人物になれる本が好きだ。 ボクの今一番好きな本は「黒死蝶」。 黒死蝶は、またの名を夜光蝶。夜は光り、昼は黒い羽。死の鱗粉を死者の国へと誘うため、狙った者へと振り掛ける。この本でのその相手は、決まって殺人犯や悪い政治家がターゲット。 死への鱗粉が掛かった者には、必ず死が訪れる…。それが、小説「黒死蝶」の文句だった。 「黒死蝶…死の…鱗粉…か…。」 そう呟くと、マコトは目を閉じた。 “ワタシは、もう。キミのソバまでキているよ。” 「君は誰?眩しくて見えないよ。」 “夜光蝶。キミを照らす光。” 「夜光蝶…まさか、黒死蝶?!」 “ワタシは、キミのソバに…。” 「…っわぁー!!って…夢か。一体、どういう意味なんだ?ボクのそばにいるって…。」 死の鱗粉は、生きるモノに必ず死をもたらす。 夜光蝶の光りで、死への道は見える。 後戻りは出来ない。 死を招く蝶からは、けして逃れられない。
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加