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マコトは家にいた。
自分の部屋で、ベットに横になると、あの時の事を思い出していた。
『キミはもう、黒死蝶に狙われた。』
あの言葉はなんだったんだ。
『黒死蝶に?何のこと?ボクにはさっぱり…。』
『ワカラないならいいよ。今は…でも黒死蝶は、キミのスグそばまで来てる…きっと、キミを狙いに。その本みたいに。』
本の中では、読んでいる自分は本に出てくる誰にでもなれた。
子どもの頃は、ピーターパンを読めばピーターパンにも、フック船長にもなれるし、今なら推理小説の中の探偵にも犯人にでもなれた。
夢の世界でなら、誰にでもなれる。
そんな、いろんな人物になれる本が好きだ。
ボクの今一番好きな本は「黒死蝶」。
黒死蝶は、またの名を夜光蝶。夜は光り、昼は黒い羽。死の鱗粉を死者の国へと誘うため、狙った者へと振り掛ける。この本でのその相手は、決まって殺人犯や悪い政治家がターゲット。
死への鱗粉が掛かった者には、必ず死が訪れる…。それが、小説「黒死蝶」の文句だった。
「黒死蝶…死の…鱗粉…か…。」
そう呟くと、マコトは目を閉じた。
“ワタシは、もう。キミのソバまでキているよ。”
「君は誰?眩しくて見えないよ。」
“夜光蝶。キミを照らす光。”
「夜光蝶…まさか、黒死蝶?!」
“ワタシは、キミのソバに…。”
「…っわぁー!!って…夢か。一体、どういう意味なんだ?ボクのそばにいるって…。」
死の鱗粉は、生きるモノに必ず死をもたらす。
夜光蝶の光りで、死への道は見える。
後戻りは出来ない。
死を招く蝶からは、けして逃れられない。
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