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その日は、この夏一番の猛暑だった。
「あっつ…」
スクランブル交差点を行き交う人の波に乗りながらジリジリと照りつける太陽に目を細める。
夏なんて大嫌いだ。
あまりの暑さに喫茶店に入り、カフェオレを手にしてボーッと流れていく人の波を見つめる。
「…もうこんな時間か」
陽が沈み始め、空が明るんできた。
俺は空っぽのグラスを持ち、立ち上がった。
「今日は、マスターまともなジュース出してくれるだろうか」
今日、一度も離さなかったギターケースを担いで、またふらふらと街を歩き始める。
一ヶ月に数回行くジャズバーのマスターは絶対に酒を出してはくれない。
その代わり、新作だと言って特製ミックスジュースを作ってくれるのだが、コレが不味いのだ。
「そこのお兄さん。
死相が出ていますよ」
しゃがれた声に視線を向けると、フードで顔を隠した占い師がいた。
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