死の足音

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 谷口さんは、ははあ、と言って膝を叩いた。 「成る程な、目ってのはつまり、お前らの周りとこの町自体を見張れってことか。確かに、どこにいるか分からん奴等相手じゃ人手がいるわな。 まあ、町のパトロールを強化するよう上に掛け合ってみるぜ。ただ、それでも全方位をカバーできるわけじゃねえからな」 「くくくっ、少しでも抑止力になればそれでいいのですよ。僕もそろそろ動きたい」 「動くって、情報集めるのか?」 「ああ、まあ、そんなところかな」  篠原にしては歯切れの悪い返答だ。何か、俺達に内緒にしてやるつもりなのかもしれない。  さて、警察が少しでも動いてくれるなら、奴らも相当慎重になるはずだ。特にバフォメットとか名乗ってる奴は焦るくらいに考えるに違いない。  奴らの狙いは俺達だから、この雨戯堂の周辺か、はたまたそれぞれの自宅らへんに姿を見せるはずだ。  瀬野尾の話だと、悪魔の自殺は一度だけで終わらない。俺達を精神的に追い詰めるため、あるいは殺すために、また血が流れるだろう。  そのためには俺達に近付かなければ。そうする必要がある。  警察が町に増えるとはいえ、穴はある。奴らはそれを見付けて、そこからこちらに迫るはずだ。ならその穴を逆に探し当てて、なんとか返り討ちにしてしまえば――。  いや、悪魔は乗り移っては離脱出来るんだ。俺達をどうにかしにきた奴を捕まえたって、無意味に終わる。  どうすりゃいいっていうんだ。情報が手に入らなきゃ、何が出来るっていうんだよ。  手詰まりだと感じた。だが、篠原は余裕という顔で、椅子にどっかりと構えている。  こいつは常に自信たっぷりだ。その自信の泉は枯れることがないんだろうな。
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