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「なあ、お前は動けるって喜んでいるみたいだけどよ、どうやって野郎を見付けるんだよ」
「くくくっ、人間に足が付いている理由を考えたことがあるかね?」
またそれか。結局、それしかない。
「効率がいいとは言えないよな」
「そうでもないさ。目星は付いてる」
俺が驚いて篠原に顔を向ける前に、谷口さんが体をテーブルに乗り出した。
「わかってんのか!? その――ば、バフ、なんとかとかいう奴の居場所が?」
手錠を取り出して、食い入るように篠原に顔を近付ける。篠原はそれに合わせて顔を引いた。
「くくっ、情報は十分ではないが、それでも五分はある。特に奴が動けないという点が、素晴らしい情報だったよ」
こいつの脳味噌はどうなってるんだ。だけどつまり、篠原がその目星の場所に辿り着いた時、全てが終わる。
胸がざわめいた。奴が反応したのかもしれない。
「なあ、俺は奴に侵食されてんだ。そういう話をして平気なのか?」
「当然だ。奴に聞かせてこそ意味がある」
篠原は挑発的な視線を俺に送った。俺ではなくて悪魔に向けているんだろう。
「じゃあ、今行動すればもうこの事件は解決するんじゃないのか。わざわざ谷口さんの力を借りなくても」
「いや、今は駄目だ」
「なんでだ? さっさと逮捕しちまえばいいだろうが。なんだったら、俺がちょちょいとお縄をだな――」
「谷口さん。奴には一般人という壁があるんですよ。文字通りの肉の壁がね。奴には難なく辿り着けるだろうが、そのために何人が犠牲になるか想像出来ませんよ」
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