死の足音

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「笑うな馬鹿野郎! 俺だって刑事なんだ。無策で突っ込みはしねえってんだ」  乗り出した体を戻して、谷口さんはふてくされた様子で椅子に深く腰掛ける。 「それで、一。場所が分かっても行けないのなら無意味じゃないかしら。どうするつもり?」 「さてね」  篠原がそう言うと、瀬野尾は理解できたのか微笑を浮かべる。  全くもって理解できないが、しかし篠原はどうにか動くはずだ。どうするつもりなんだか。  篠原が単独で動けばどうだ。いや、奴の居場所がどこか分からんが、それにしたって周辺に自分の代わりとなる目をおいてあるはずだ。  そうなると、正攻法で近付くのは不可能に近い。なら、どうやって?  うんうんと悩んでみても、俺の頭では奴の思考と重なる考えを持つことは出来なかった。 「まあ、とにかくお前の話は理解した。すぐには無理だが、一日二日後くらいには、町の風景に、警官が多くなるだろう」 「頼みます」 「無茶はすんなよ。おう、金はここに置いとくからな」  谷口さんはその中年太り気味の体を重そうに上げて、店から出ていった。 「なんだか、進展があったみたいだったね」  今まで見ていた堀川が、お金の回収にやってきた。 「嫌な進展だったけどな。それにしても、本当にどうする気だ? 俺には身動き出来ない状況にしか考えられないんだが」 「僕はそう考えていない。どうにでも動く方法はあるさ」 「どうやって悪魔の目から逃れるんだよ? その辺にいるんだ。特徴なんて何にもない、普通の人間が悪魔かもしれないんだぜ。どこから見てるか、聞いてるか判らねえ」 「それでも、そいつらを突破しなくては奴らの親玉には近寄れない」  どうにも篠原には打開策があるようだ。ここまで言っても決意が固い以上、何かしらの方法を思い浮かべているらしい。  瀬野尾は思考を読むことが出来る場合もあるみたいだし、篠原の考えが見えたのかもな。そう考えると、置いてきぼりをくらっているのは俺と堀川か。
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