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場所は変わって、ロシア北西部にある、『シユウ軍事基地』。
依頼内容の通り総督が視察に来るらしく、重大な警備が敷かれている。
ジープの後部座席からそれを見ていた俺は、小さくため息をついた。
「今回ばかりは、アンタでもきついだろ。ミスター黒瀬。」
何年も仕事を共にしてきた相棒のジャックが、苦笑しながらハンドルを握る。
「バカか、お前。俺に不可能なんてないんだよ。というか、鼻先に雪が着いてるから取れ。」
「……ま、こんなに雪が降ってるんだ。屋根無しのジープで、全身に雪が積もらない方がおかしいだろ。」
ま、それもそうか。
さて、そろそろ基地が近づいてきたな。
俺はフゥ、と息をはいて意識を落ち着かせ、防寒ジャンパーから、これまた相棒のコルト・カバメントを引き抜いた。
「ま、そこで祈っててくれよ。」
ジャックがジープを基地の塀に寄せると、俺は彼にそう告げ、塀に向かって飛び出した。
雪と風でバランスを崩しそうになるが、なんとか右手で塀に飛び付く。
「行ってくるぜ、相棒。」
「行ってこい、相棒。」
お互いにそう言い合った後、俺は右手に体重をかけ、一気に塀を越え、内部に侵入した。
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