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漸く離れると、凍夜が大きく息を吸ったのがわかる。
肩で息をしながらも、気丈に振る舞おうと必死になっているようだった。
隻眼が揺れ、そんな表情が何とも色っぽい。
手を出したくなっちゃうな。
回していた腕を離し、右手の甲で口元を拭う。
腕を離す時、凍夜の目が一瞬見開かれたのを見逃さなかった。
「可愛いね」
殴られることを覚悟しての発言だったが、その必要はなかった。
凍夜が照れていた。
普通に、照れていたのだ。
「本っ当、可愛いんだから。君って奴は」
強く抱きしめてやれば、気が抜けたのかそのまま倒れ込んできた。
重さは感じるが、重くはない。
重くはないが、想いはある。
「好きだ、凍夜」
「……オレも、」
こんな距離でしか聞こえないような声で、しかしはっきりと。
「オマエが、好きだ」
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