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二階から激しい物音と叫び声が聞こえ、政哉は溜め息をついた。
仕方ないと思いつつ足早に階段を上がり、一つの扉の前に立つ。
物音と叫び声が一層大きくなった気がする。
「凍夜、」
扉を開け名前を呼べば、全ての音が止む。
中は荒れに荒れていた。
ありとあらゆる物が倒れ壊され、酷い有様だった。
それは物だけではない。
部屋の中央に立ち、じっと政哉に視線をやる凍夜。
今にも倒れてしまいそうなほどふらついていて、その左目は虚ろだった。
見れば体中が傷だらけで、服にも床にも壁にも、血が飛び散ってしまっている。
凍夜には精神不安定なところがある。
よくは知らないが、過去に何かがあったらしい。
月に一、二回こうやって暴れ出し、自傷行為を繰り返す。
鬱状態よりも放心状態よりも、何よりも厄介な時期だ。
「ま、さ……や?」
消え入りそうな声で呟くと、左手に持っていた何かを右手に持ち替えた。
そしてその右手を首まで持って行き、引いた。
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