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詩人は何かに気付いた様に唄を止めた。 彼の視線の先には継ぎ接ぎだらけの服を着た10歳にも満たないであろう少女の姿があった。 青みを帯びた銀髪を持つその少女は、酒場の軒先へ雨宿りをしに飛び込んできたのだ。 「雨は体に悪い…‥。 コレを使いなさい」 彼は竪琴を椅子に残したまま少女のもとへ行くとそう言って、自分の身につけたマントと同じ様な生地の布をどこからともなく取り出しすと彼女の身にフワリと掛けた。 布を取り出す時に見えた彼の長い髪は、このフォンタナ国内では珍しい暗い紫色をしていた。 少女は少々戸惑いながらも礼を言うようにペコリと一礼をすると…‥再び町中へと消えて行った。 「…‥汝の行く末に幸多かれと願い祈らん」 紫髪の詩人は少女の背に小さく祈りの言葉を投げ掛けた後、再び先程の席へと戻っていった。 「━━━━━ ━━ ━━━━…‥」 彼は小さく何かを呟くが、雨の音にかき消されてしまった。
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