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一方詩人にもらった布に身を包んだ少女は某酒屋に来ていた。
酒屋の主人は彼女の姿に気が付いた。
「ルウ、そこで待ってろよ!」
主人は彼女に言うと店の奥へと声をかけた。
「おいガラン、ルウの酒瓶を持ってきてくれ!」
ルウと呼ばれた少女は、持っていた財布代わりの巾着から銅貨を何枚か取出すと主人に渡し、奥から出てきた少年ガランから酒瓶を受け取った。
これは安価のわりには意外に旨いと評判の酒で、ルウの養父ラスが好きな酒でもあった。
この酒屋の主人はルウの養父ラスの友人でもあり、ルウ達の幼なじみの父親でもあった。
ルウは5日に1度は早朝に酒瓶を預けて仕事へ行き、夕方の帰宅途中に取りに来る。
そんな彼女を、ラスに拾われた時から見守ってきたのだった。
また、ガランという少年も彼女とは3歳違いの幼なじみであり近所から酒屋に働きに来ていた。
酒屋の主人にとっても、2人には我が子同然の感情を抱いていた。
ガランはいつも通り酒瓶を落とさないよう丁寧に運ぶルウを店先で見送った。
一方の主人は、数日前に彼女の身辺を調べにきた騎士の事を本人にどう告げるか悩んでいた。
だが結局彼が少女に言うことはなかった。
それは数日後、彼女の姿がこの街ロキムから騎士とともに消えていたから…‥。
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