空気みたいな人

1. いつもの週末

・・・ねむい。

今日は金曜日。
時間は22時30分。

ITベンチャーが多数入居するビルには、まだ灯りがついてるフロアーが沢山。

「そろそろ帰るかー！！」

思いっきり背伸びして固まった肩をほぐしつつ、机の上のスマホに目をやると、ちょうどアプリの新着アイコンが点滅していた。
画面を指でなぞって表示する。

〈後20分ぐらいで着くけど〉

・・・！ヤッバイ！
〈今、オフィス出ます！〉

慌ててMacをシャットダウンして、ビル地下１階の駐輪場へ。
一人暮らしのマンションまで約20分の自転車通勤をしている私には、ギリギリの時間しか残されていない。

地上にあがるスロープに差し掛かると、なじみの守衛さんと
「お疲れさまでーす」
「気をつけなさいよ?」
と声を掛け合い、自転車を押しながら一気に駆け上がる。

朝から会社にこもりっきりだった私には、一日で一番体力的にキツイ瞬間。