1. いつもの週末

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6月。 夜の幹線道路沿いを勢いよく5分ほど走ると、すぐに汗ばむ。 「あっつーい!でも、気持ちいーい」 時折出現するゆるい下り坂。 ほどよい夜風が眠気を吹き飛ばし、併走する車のテールランプの揺らめきの美しさを眺めながら「あ、そうか、起動画面で・・・」さっきまで、会社で眠たい頭で何も浮かんでこなかった、来週プレゼンを控えた新規サービスの企画を思いつく。 (あぁぁ、今すぐメモしたい!忘れちゃうかもーーー) 会社を出てから18分。 夜は信号につかまりにくいから、ちょっとだけ速い。マンション近くの公園脇に紺色のプジョーが停車したところだった。 「おかえり!」 タイミングよく開いたドアから元気な声が聞こえる。 「間に合った?」 自転車を降りて、かけよった私に、彼は軽くキスをした。 私、遠藤真由子、25歳。 美大の情報デザイン科を卒業した後、在学中からアルバイトしていたITベンチャー「リパブリック」にそのまま就職。 今年で社会人4年目。 「リパブリック」は、スマートフォン向けアプリ業界で、今ちょっとした注目を集めているベンチャー企業。 私はプロデューサーとして忙しい日々を送っている。 キスした彼は・・・
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