3. 理想と現実

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「ちょっと、待って・・・ンッ」 「待てないよ」 パーティーが終わって芳川さんの車で私のマンションに到着。 なんとなく暗黙のルールで私のマンションで会う事になっている金曜日。 でも、実際には毎週ってわけにもいかないから、2人きりで会う時間は限られていて。 車中で〈新しい大型タイアップ企画が実現しそう!〉とニコニコ話していた芳川さん。 上機嫌だなぁ、と、飲めないけれど雰囲気でほろ酔い気分になっていた私も、ニコニコして聞いていた。 手をつないで部屋に入ると、いきなりお姫様だっこでソファーベッドに運びこまれた。 「ちょっと、靴・・・」 「ダーメ。俺が脱がせる」 「ンッ・・」 部屋に入るまでは、いつもの芳川さんだったのに。 ヒールのところだけ真っ赤なピンヒール。 ベッドに降ろしつつ、芳川さんの手が足をなぞりながら、下におりて。 左、右、と、靴を脱がせてベッド下の、読み終わった雑誌が積まれた上に。 荒々しいキスで口をふさがれながら〈あ・・・ちゃんと置く場所、気をつかってくれてるんだ〉と、妙におかしくなって、少し笑いそうになる。でも、靴を脱がせた後の芳川さんは、さらにヒートアップして。 「なんで、会社であんな色っぽいカッコに着替えちゃうの? 会社戻ったら、男どもが騒いでたよ。もう」 「だって、たまには・・・」 いつも、じれったいほど丁寧に愛撫してくれる芳川さんが、今日はいつもと違っていて。 ヤキモチ・・・? 荒っぽく、私を攻め立てる。 「まだだよ。まだダメだよ」 「ァンッ」 つながって、お互いの体温を交換する。 この時だけは、仕事も会社も関係ない、ただの男と女で。 不安も悩みも、全部頭から追い出して、真っ白になれる。 「きれいだ・・・」 意識が遠のきそうになりつつ、耳元でささやく甘い声に反応する。 〈も・・・ダメっ・・・〉 声にならない。 .
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