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ピチョン…ピチョン…
非常灯だけの薄闇の下水道で、上下黒のジャージに身を包んだ男は、通路にある作業用の設備に腰を掛けた。
すぐ足元の水路を淀みつつ汚水が流れていく。
「ねえ、いい加減にしてくんないかな?」
ため息混じりに言いながら、目深に被ったフードを外した。
薄闇でも髪色は明るいと分かる。
黒のバンダナで口元を覆っていて表情は分かりにくいが、瞳はイラつきを隠せていない。
「ねえ、聞いてる?ぎーちゃん?」
黒ジャージの男は光流の親友、本田だ。
チャポ…
水面から何かが現れた。
脳天は禿げたように毛がない黒髪の子供が、目までを水面に出して本田を見ている。
チャポ…
「嫌だ。あんたは変な大人だ」
水面から顔を出した子供は鼻梁が無く、孔だけが顔の中央にあり、くちばしのような口をへの字にした。
「大人なんて、みんな変さ。むしろ、普通と言われる方が心外だね」
本田は鼻で笑う。
「…あんたの体は混雑してる。変だ」
ザパ…
水路から出た子供は、緑色の肌をしていた。
その肌はヌメヌメと光る、粘膜に覆われている。
「へぇー、河童のくせに…」
クスクスと笑いながら本田は、河童のぎーを見つめた。
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